写真:国連広報センター(http://www.unic.or.jp/)
◯トランプの国連総会演説
国連総会大統領演説全文|ホワイトハウス
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/09/19/remarks-president-trump-72nd-session-united-nations-general-assembly
2017年9月19日に国連総会で行われたトランプ米大統領の演説は、なかなかバランスの取れた演説だった。
後半部に、米国の雇用流出をこじつけたようなトランプ節と言える部分はあったものの、北朝鮮、イラン、ベネズエラに対する有効な措置を何一つ行えない国連の現状、米国が10年来問題にしている「国連人権理事会」を具体例に国連が「機能停止」している現状を示しながら、米国が予算全体の22%以上を負担している「国連分担金」に疑問を呈したのは、米国の大統領としてとくに問題のある主張ではなかった。互いに褒め合って、オベンチャラしか言わないような一般討論演説が多いことを見れば、良い内容だったのではないか。
一国のリーダーが、代表する国家の利益を第一に論ずるのは当たり前の話であり、トランプが軽薄なTweetで連発している「トランプ節」や、記憶に新しい就任演説で下品にぶちまけた「米国第一主義」とは別である。ここは正しく評価したいところだ。
◯安倍首相が国連総会演説で求めたこと
国連広報センター:安倍首相による一般討論演説(http://www.unic.or.jp/news_press/info/25974/)
第72回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説|首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2017/0920enzetsu.html
第72回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説 平成29(2017)年9月20日|外務省
http://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/unp_a/page4_003327.html
SDGs:2015年国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」
貧困と飢餓をなくし、すべての人に健康と福祉、質の高い教育を行き渡らせ、男女平等を実現し、安全な水とトイレを世界中に普及させるなど、合計で17の目標と、これを実現するための169のターゲットで構成された国際目標
冒頭部分でSDGsに触れた上で、日本の常任理事国入りについて触れているが、極めて中途半端な言い方で、これでは何の意味もない。ただ言うために言っただけ、発言実績を作った自己満足にしかならない。
◯日本政府は国連の敵国条項を棚上げして分担金2億数千万円を払い続けるのか?
国連改革:日本の優先事項|外務省(平成18年)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/un_kaikaku/j_yusen.html
国連の「旧敵国条項」(Wikipedia):
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B5%E5%9B%BD%E6%9D%A1%E9%A0%85
国連分担金:外務省「2015~2017年国連通常予算分担率・分担金」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html
日本と国連との間には「旧敵国条項」という重い壁がある。20年以上前に意味のない条項との決議もあるが、現にその後も中国などはこの旧敵国条項を引き合いに出して、日本批判を行っている。
国連憲章に記載されている条項のため、これを削除するには、加盟国の2/3以上が条約として批准(各国の議会で承認)、署名する必要がある。中国やロシアは、こうした動きを阻止しようとしており、実現には大変大きなエネルギーを要するから、「他の関連案件に絡めて実現を目指す」というのが日本の外交方針であったはずであり、国会答弁でもそうした認識が示されてきた経緯がある。
今がそうではないのか?
むしろ日本としては、北朝鮮のように国際社会で恫喝する国家こそ「敵国条項」で名指しすべきと提案すればよい。加えて、そんな北朝鮮に軍需物資や核ミサイル技術、資金援助を行う支援国家についても「敵国条項」に含めるかどうかを検討すべきだと提案すれば良い。
むろん、簡単なことではないが、米国が国連批判をしている時を逃して、ほかに一体どんなチャンスがあると言うのか?自らの自発的な努力の積み重ねの先に、日本の常任理事国入りがある、と私は思う。
◯北朝鮮包囲網形成に国連が機能しないなら、日本は国連への拠出金を保留すべき
北朝鮮に対する実効性を伴う制裁が行われるかどうか、国連憲章の日本に対する不適切な条項が未だ解消されていない状況に、日本政府は徹底的に抗議する義務がある。
日本の真剣味を示すには、国連分担金を見直す意志を表明すれば良い。これまでのほとんどの政権や外務省は、日本の納税者に対してとても不誠実であり、この点はトランプの爪の垢でも...と言いたいところである。
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